ジュリオ・マンフレドニア:人生、ここにあり! ☆☆☆☆・


img_0

2008年の作品で、1980年代が舞台。40年経ってるのにな。それにしても邦題!

法律により精神病院の撤廃が進められていた1980年代のイタリア・ミラノを舞台に、実話を映画化したコメディドラマ。革新的な考え方をもつネッロは労働組合から疎まれ、精神病院から追い出された元患者たちの協同組合に左遷される。精神病の知識などないネッロだったが、元患者たちとあらたな事業を立ち上げるために奮闘する。イタリア映画祭2009にて「やればできるさ」のタイトルで日本初上映。11年劇場公開。

吉田 篤弘:月とコーヒー ☆☆☆☆☆

img_0

至極の幸せな時間をくれる24ピース。

喫茶店“ゴーゴリ”の甘くないケーキ。世界の果てのコインランドリーに通うトカゲ男。映写技師にサンドイッチを届ける夜の配達人。トランプから抜け出してきたジョーカー。赤い林檎に囲まれて青いインクをつくる青年。三人の年老いた泥棒、空から落ちてきた天使、終わりの風景が見える眼鏡―。忘れられたものと、世の中の隅の方にいる人たちのお話です。小箱の中にしまってあったとっておきのお話、24ピース。

吉田 篤弘:流星シネマ ☆☆☆☆☆

img_0

シ(詩)とシ(死)の音はソとラ?。安定の、静かで優しい物語。

都会のへりの窪んだところにあるガケ下の町。僕はその町で、“流星新聞”を発行するアルフレッドの手伝をしている。深夜営業の“オキナワ・ステーキ”を営むゴー君、メアリー・ポピンズをこよなく愛するミユキさん、「ねむりうた」の歌い手にしてピアノ弾きのバジ君、ロシアン・コーヒーとカレーが名物の喫茶店“バイカル”を営む椋本さん、ガケ上の洋館で、“ひともしどき”という名の詩集屋を営むカナさん―。個性的で魅力的な人々が織りなす、静かであたたかな物語。

アニエス・ヴァルダ, JR:顔たち、ところどころ ☆☆☆☆☆


img_0

素敵な仕事。素敵な関係。

フランス映画界の名匠アニエス・バルダと若手アーティストのJRが共同監督を務めたロードムービースタイルのドキュメンタリー。「ヌーベルバーグの祖母」とも呼ばれ、女性監督の先駆者としてカンヌ国際映画祭やアカデミー賞の名誉賞も受賞している88歳のバルダと、参加型アートプロジェクト「Inside Out」で知られる34歳のアーティスト、JR。親子ほども年の離れた2人がフランスの田舎をトラックで巡りながら、市井の人々と接し、作品をともに作り、残していくいく旅の様子を記録した。2017年・第70回カンヌ国際映画祭で最優秀ドキュメンタリー賞を受賞し、トロント国際映画祭の最高賞である観客賞など、各国の映画祭で受賞を重ねる。

ニコラ・バニエ:ベル&セバスチャン ☆☆☆☆・


ヒヤヒヤでしたが目をそむけたくなるシーンが結果的になくてよかった。冒頭以外。

日本では「名犬ジョリィ」のタイトルでテレビアニメ化されたセシル・オーブリー原作の児童文学を実写映画化。戦時中のアルプスの小さな村で暮らす孤児のセバスチャンは、家畜や人を襲う「野獣」として村人たちから命を狙われている一匹の犬に出会う。セバスチャンは犬をベルと名づけて村人から守り、ベルとセバスチャンは次第に心を通わせていった。やがて戦争の影が色濃くなると、村にもナチスの捜索の手が伸びるようになる。ナチスからユダヤ人一家を救うため、ベルとセバスチャンは道案内人として冬のアルプス越えに挑むこととなるが……。監督は冒険家でもあり、映画「狩人と犬、最後の旅」も手がけたニコラ・バニエ。

マイク・ミルズ:人生はビギナーズ ☆☆☆☆・


名役者さんぞろい。

ユアン・マクレガー主演で人生を前向きに生きようと変化してく人々の姿を繊細に描いた人間ドラマ。38歳独身で奥手なオリバーは、母に先立たれ5年がたったある日、ガンの宣告を受けた父からゲイであることをカミングアウトされる。衝撃を受けたオリバーは事実をなかなか受け止められず臆病になってしまい、運命的な出会いを果たした女性アナとの関係も自ら終わらせてしまう。しかし、真実を告白した父は残された人生を謳歌し、その姿を見たオリバーは自分の気持ちに正直に生きることを学んでいく。監督は「サムサッカー」のマイク・ミルズ。主人公の父親を演じたクリストファー・プラマーが、第84回アカデミー賞で助演男優賞を受賞。受賞時82歳で演技賞史上最高齢でのアカデミー賞受賞となった。

デビッド・フランケル:ビッグ・ボーイズ ☆☆☆☆・


ザ・ビッグイヤーのルールが性善説で良い。

ジャック・ブラック、スティーブ・マーティン、オーウェン・ウィルソン主演で、北米最大のバードウォッチング大会「ザ・ビッグイヤー」に参加する男たちの姿を描いたハートフルコメディ。愛鳥家にとってあこがれの大会「ザ・ビッグイヤー」は、1年間に北米大陸で見つけた野鳥の種類の数を競い合う、アメリカ探鳥協会主催の記録会。しかし、その大会に参加するには、仕事や家庭に支障をきたすほどの時間とお金を費やさなければならない。年齢も立場も違う鳥好きな3人の男が、夢と現実の間で葛藤しながらも、野鳥を探し求めて奔走する姿を描く。監督は「プラダを着た悪魔」のデビッド・フランケル。製作総指揮にベン・スティラー。

ロジャー・スポティスウッド:ボブという名の猫 幸せのハイタッチ ☆☆☆☆・


ボブは本人出演!?とても賢い子です。

ホームレス同然のストリートミュージシャンが一匹の野良猫との出会いによって再生していく姿を描き、世界的ベストセラーとなったノンフィクション「ボブという名のストリート・キャット」を、「007 トゥモロー・ネバー・ダイ」のロジャー・スポティスウッド監督のメガホンで映画化。ロンドンでプロのミュージシャンを目指すジェームズは、夢を果たせず、薬物に依存、家族にも見放され、ホームレスとしてどん底の生活を送っていた。そんな彼のもとに迷い込んできた一匹の野良猫。足をケガしていたその猫はボブと命名され、ジェームズはそんなボブを有り金をはたいて看病する。それ以来、いつも一緒に行動をともにするジェームズとボブ。そんな彼らの姿は次第に世間の注目を集めるようになり……。ジェームズ役に「アタック・ザ・ブロック」「タイタンの戦い」のルーク・トレッダウェイ。猫のボブ役には実際のボブが出演。

ベルナー・ブーテ:グリーン・ライ エコの嘘 ☆☆☆☆・


Co2のように経済規模を小さくしたら称賛される仕組みがつくれないかな。

スーパーの店頭で目にする「環境にやさしい」商品に疑問を抱いた監督が、専門家と2人で世界一周をしながら「エコの嘘」の実態に迫っていくオーストリアのドキュメンタリー。ベルナー・ブーテ監督はグリーンウォッシングの専門家カトリン・ハートマンともにスーパーを訪れる。そこで2人はカップスープやピザ、ドレッシングなど多くの商品に「持続可能な」と表示のあるパーム油が使用されていることを知る。ハートマンは「持続可能なパーム油などない」と主張し、その言葉に驚いた監督は実態を知るためハートマンともに旅へと出発する。2人が最初に向かったのは世界一のパーム油生産量を誇るインドネシア。そこで2人が目にしたのは、かつての熱帯雨林だった土地が、パーム油農園拡大のために企業によって不法に焼き尽くされた姿だった。それは「環境にやさしい」商品を生産するために環境を破壊するという矛盾に満ちた行為だった。

グレッグ・フレディ・キャマリア:黄金のメロディ マッスル・ショールズ ☆☆☆☆☆


FAME最高すぎる。まさに伝説。

「ザ・ローリング・ストーンズ」や「U2」といった一流ミュージシャンたちが数々の名盤を生みだした、米アラバマ州マッスル・ショールズの伝説的スタジオを題材にした音楽ドキュメンタリー。古来よりネイティブ・アメリカンに「歌う川」と崇められてきたテネシー川沿いに位置するマッスル・ショールズ。魔法の音楽が生まれるとして多くのミュージシャンを虜にしてきたスタジオの創設者たちにスポットを当て、同地が「音楽の聖地」と呼ばれるようになるまでの軌跡をたどる。さらに、ミック・ジャガーやキース・リチャーズ、アレサ・フランクリンら、そうそうたる顔ぶれのミュージシャンたちがその魅力を語る。

ルーシー・ウォーカー:ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ★アディオス ☆☆☆☆・


ソンもマンボも大好きだけど、
なによりキューバの人の価値観や生き方はホント素晴らしく憧れる。

日本でも大ヒットを記録した1999年製作の音楽ドキュメンタリー「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ」から18年を経て、現メンバーによる最後のツアーを追ったドキュメンタリー。アメリカの偉大なギタリスト、ライ・クーダーがキューバでセッションした地元の老ミュージシャンたちに声をかけて結成されたビッグバンド「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ」。97年にリリースされたアルバムは世界的に大きな注目を集め、グラミー賞を受賞した。本作では、グループによるステージでの活動に終止符を打つと決めた彼らの「アディオス(さよなら)」世界ツアーを追うとともに、彼らのプロとしてのキャリアの浮き沈みやこれまで歩んできた旅路、さらにメンバーの死にも迫る。前作で監督を務めたビム・ベンダースが製作総指揮、「ヴィック・ムニーズ ごみアートの奇跡」のルーシー・ウォーカーが監督を務めた。

長谷井宏紀:ブランカとギター弾き ☆☆☆☆・


ピーターカッコいい。

写真家として活躍する長谷井宏紀がイタリア製作映画として手がけた監督デビュー作で、フィリピンを舞台に、孤児の少女と盲目のギター弾きの旅を描いたロードムービー。マニラのスラムに暮らす孤児のブランカは、母親を金で買うことを思いつき、盲目のギター弾きピーターと旅に出る。ピーターから得意な歌でお金を稼ぐことを教わったブランカは、レストランで歌う仕事を得てお金を稼ぎ、計画は順調に進んでいるかに思えた。しかし、そんな彼女の身に思いもよらぬ危険が迫っていた。長谷井の第一回長編監督作品となる本作は日本人初となるベネチア・ビエンナーレ、ベネチア国際映画祭の出資で製作され、第72回ベネチア国際映画祭でソッリーゾ・ディベルソ賞、マジックランタン賞を受賞。

サイモン・カーティス:エンツォ レーサーになりたかった犬とある家族の物語 ☆☆☆☆☆


人間には犬という友人がいて本当に幸せ。

ガース・スタインのベストセラー小説「エンゾ レーサーになりたかった犬とある家族の物語」を映画化し、カーレーサーとその家族の人生を犬の視点から描いたドラマ。スウィフト家の飼い犬エンツォは、どしゃ降りの人生を歩むことになった一家の心の支えとなり、彼らをあたたかく見守り続けた。老境に入ったエンツォが、時にユーモラスに、時に辛口に、愛する家族と過ごした日々を回想していく。ケビン・コスナーがエンツォの声を務め、「ロッキー・ザ・ファイナル」のマイロ・ビンティミリアと「マンマ・ミーア!」シリーズのアマンダ・セイフライドがスウィフト夫妻を演じる。監督は「マリリン 7日間の恋」のサイモン・カーティス。

オリヴィエ・ナカシュ : 最強のふたり ☆☆☆☆・


素晴らしいふたりの演技。リメイク版必要なのかなー。それよりも個人的には、ロバート・カーライルの「最高のふたり」の方が気になる。。

車いすで生活している大富豪と介護者として雇われた黒人青年が垣根を越えて友情を結ぶ、実話を基にしたヒューマン・コメディー。年齢や環境、好みも異なる二人が、お互いを認め合い、変化していくプロセスを描いていく。監督は、本作が長編4作目となるエリック・トレダノとオリヴィエ・ナカシュのコンビ。主演は、『歌え! ジャニス★ジョプリンのように』のフランソワ・クリュゼと『ミックマック』のオマール・シー。フランス本国のみならずヨーロッパで記録的なヒットを樹立した、笑いと感動に包まれた良質なコメディーを堪能できる。

ケン・ローチ : 家族を想うとき ☆☆☆☆☆


悪意がなくてもテクノロジーを企業視点で活用すると、こういう世の中が普通にできあがってしまうのが資本主義経済。テクノロジーに関わる人はよくよく「目指したい未来」と照らしあわせて技術の使い所を考える必要がある。

「麦の穂をゆらす風」「わたしは、ダニエル・ブレイク」と2度にわたり、カンヌ国際映画祭の最高賞パルムドールを受賞した、イギリスの巨匠ケン・ローチ監督作品。現代が抱えるさまざまな労働問題に直面しながら、力強く生きるある家族の姿が描かれる。イギリス、ニューカッスルに暮らすターナー家。フランチャイズの宅配ドライバーとして独立した父のリッキーは、過酷な現場で時間に追われながらも念願であるマイホーム購入の夢をかなえるため懸命に働いている。そんな夫をサポートする妻のアビーもまた、パートタイムの介護福祉士として時間外まで1日中働いていた。家族の幸せのためを思っての仕事が、いつしか家族が一緒に顔を合わせる時間を奪い、高校生のセブと小学生のライザ・ジェーンは寂しさを募らせてゆく。そんな中、リッキーがある事件に巻き込まれてしまう。2019年・第72回カンヌ国際映画祭コンペティション部門出品。

パブロ・ソラルス : 家(うち)へ帰ろう ☆☆☆☆・


シンドラーのリストはつらくて途中でなげだしたけど、こちらは最後まで見れた。監督に感謝。

ホロコーストを生き抜いたユダヤ人の老人が、70年の時を経て、友人との約束を果たすためにアルゼンチンから故郷ポーランドへ旅する姿を描いたロードムービー。ブエノスアイレスに暮らす88歳の仕立て屋アブラムは、自分を高齢者用の施設に入れようとする子どもたちから逃れ、故郷であるポーランドを目指して旅に出る。そして、その旅には、第2次世界大戦時、ユダヤ人である自分をナチスの手から救ってくれた親友に、自分が仕立てた最後のスーツを渡すという目的があった。監督はアルゼンチンの人気脚本家で、監督作はこれが長編2作目となるパブロ・ソラルス。主演はカルロス・サウラ監督の「タンゴ」で知られるミゲル・アンヘル・ソラ。

ジョン・キャロル・リンチ : ラッキー ☆☆☆☆☆


ハリー・ディーン・スタントン、とにかくかっこいい。声がとにかく良い。

「パリ、テキサス」「ツイン・ピークス」で知られる個性派俳優で、2017年9月に逝去したハリー・ディーン・スタントンの最後の主演作。「ファウンダー ハンバーガー帝国のヒミツ」などの名脇役ジョン・キャロル・リンチが初メガホンをとり、スタントンに当て書きしたという90歳の気難しい現実主義者ラッキーを主人公に、全ての者に訪れる人生の最後の時間を描く。神など信じずに生きてきた90歳の男ラッキー。ひとりで暮らす部屋で目を覚ますとコーヒーを飲んでタバコをふかし、なじみのバーで常連客たちと酒を飲む。そんなある日、自分に人生の終わりが近づいていることに気付いた彼は、「死」について思いを巡らせる。子どもの頃に怖かった暗闇、去っていったペットの亀、戦禍の中で微笑んだ日本人少女。小さな町の住人たちとの交流の中で、彼は「それ」を悟っていく。スタントン本人の体験に基づくエピソードが描かれるほか、長年にわたるスタントンの盟友デビッド・リンチ監督が主人公の友人役で登場。

ケン・ローチ : わたしは、ダニエル・ブレイク ☆☆☆☆☆


最後のシーン、良かったなー。

2016年・第69回カンヌ国際映画祭で、「麦の穂をゆらす風」に続く2度目の最高賞パルムドールを受賞した、イギリスの巨匠ケン・ローチ監督作品。イギリスの複雑な制度に振り回され、貧困という現実に直面しながらも助け合って生きる人びとの姿が描かれる。イギリス北東部ニューカッスルで大工として働くダニエル・ブレイク。心臓に病を患ったダニエルは、医者から仕事を止められ、国からの援助を受けようとしたが、複雑な制度のため満足な援助を受けることができないでいた。シングルマザーのケイティと2人の子どもの家族を助けたことから、ケイティの家族と絆を深めていくダニエル。しかし、そんなダニエルとケイティたちは、厳しい現実によって追い詰められていく。

ジョナサン・デイトン : リトル・ミス・サンシャイン☆☆☆☆・


やっぱりポール・ダノは才能のある俳優さんだなぁ。

サンダンスを始め、多くの国際映画祭で、スタンディング・オベーションの絶賛を受けたロードムービー。美少女コンテストのクィーンを夢見る少女とその個性的な家族が、黄色いワゴン車に乗ってコンテスト会場を目指す姿を描く。主人公の家族を演じるのは、『40歳の童貞男』のスティーヴ・カレル、『イン・ハー・シューズ』のトニ・コレットら。機能不全に陥った一家族が、旅を通して再生していくハートウォーミングな展開が見どころ。第19回東京国際映画祭で最優秀監督賞、最優秀主演女優賞、観客賞など最多3部門を受賞した。

マーティン・スコセッシ : アイリッシュマン☆☆☆☆・


3時間オーバーだけどあっという間。ハーヴェイ・カイテルの出番が少なかったのが残念。

「タクシードライバー」「レイジング・ブル」など数々の名作を生み出してきた巨匠マーティン・スコセッシとロバート・デ・ニーロが、「カジノ」以来22年ぶり9度目のタッグを組み、第2次世界大戦後のアメリカ裏社会を生きた無法者たちの人生を、ひとりの殺し屋の目を通して描いた力作。伝説的マフィアのラッセル・バッファリーノに仕えた実在の殺し屋で、1975年に失踪した全米トラック運転組合委員長ジミー・ホッファをはじめ、多くの殺人事件に関与したとされるフランク・“アイリッシュマン”・シーランをデ・ニーロが演じるほか、ジミー・ホッファ役のアル・パチーノ、ラッセル・バッファリーノ役のジョー・ペシと、ハリウッドのレジェンド級俳優が豪華共演する。脚本は「シンドラーのリスト」「ギャング・オブ・ニューヨーク」のスティーブン・ザイリアン。

マルコ・レール : ネイチャー・シンフォニー ☆☆☆・・


森、海、川。四季と動物たちの素敵な世界。

水の国フィンランドの自然と動物、そしてオーケストラが奏でる生命賛歌ドキュメンタリー
フィンランド映画祭2016のオープニング作品「湖のものがたり」のスタッフによる最新作。本作では自然と音楽の調和がテーマ。ヴァンター交響楽団と40人の合唱団、そして歌手ヨハンナ・クルケラによって奏でられる作曲家パヌ・アールティオの音楽が、四季を通じて生きるフィンランドの生物たちの多様性へといざなう。 さまざまな自然の音空間の中に、楽器、合唱団、歌手それぞれの場所を作り出すという、パヌ・アールティオにとって挑戦ともいえる方法で作曲された音楽は、通常の映画音楽よりも大きな役割で物語を語りだす。自然を積極的に擁護し、その状態が私たち全てにとって、いかに重要であるかを理解しているマルコ・レール監督の数十年にわたる自然との関係を結晶化させた作品。

ミーア・テルボ : アウロラ ☆☆☆・・


登場人物が憎めないのが、フィンランド映画。

フィンランド人女性と難民男性の出会いを描いた現代的なラブストーリー
ある夜、フィンランドのラップランドにあるホットドッグ・スタンドで、パーティ・ガールのオーロラがイラン人のダリアンと出会う。ダリアンは突然彼女に自分と結婚してくれるように頼みこむ。ダリアンは自分と娘の亡命のためにフィンランドの女性と結婚する必要があったのだ。だがオーロラは酒におぼれる荒んだ生活を捨てノルウェーに移ろうと計画しているため、彼の申し出を断った。しかし、彼の可愛い娘に会ったことから、オーロラは彼に結婚相手を見つけることを約束する…。エディンバラ国際映画祭2019においてインターナショナル長編作品賞を受賞するほか、数々の映画祭でノミネートされた話題作。オーロラ役を演じたミモサ・ヴィッラモはフィンランド映画祭2016にて上映された「ボドム」に出演している。

江國 香織:犬とハモニカ ☆☆☆・・

img_0

川端賞受賞。

外国人青年、少女、老婦人、大家族……。空港の到着ロビーで行き交う人々の、人生の一瞬の重なりを鮮やかに掬い取った川端賞受賞の表題作。恋人に別れを告げられ、妻が眠る家に帰った男性の心の変化をこぼさず描く「寝室」。“僕らは幸福だ”“いいわ”――夫婦間の小さなささくれをそっと見つめた「ピクニック」。わたしたちが生きる上で抱え続ける、あたたかい孤独に満ちた、六つの旅路。

小川 洋子:ことり ☆☆☆☆☆

img_0

読んでから数年立つけど、いまだに映像が浮かぶ。

人間の言葉は話せないけれど、
小鳥のさえずりをよく理解し、
こよなく愛する兄と、
兄の言葉を唯一わかる弟。
小鳥たちの声だけに耳を澄ます二人は、
世の片隅でつつしみ深く一生を生きた。
やさしく切ない、著者の会心作。

江國 香織:ぼくの小鳥ちゃん  ☆☆☆☆☆

img_0

完璧。

雪の朝、ぼくの部屋に、小さな小鳥ちゃんが舞いこんだ。体長10センチ、まっしろで、くちばしときゃしゃな脚が濃いピンク色。「あたしはそのへんのひよわな小鳥とはちがうんだから」ときっぱりいい、一番いいたべものは、ラム酒のかかったアイスクリーム、とゆずらないしっかり者。でもぼくの彼女をちょっと意識しているみたい。小鳥ちゃんとぼくと彼女と。少し切なくて幸福な、冬の日々の物語。

吉田 篤弘:おるもすと ☆☆☆☆・

img_0

作者にとって特別な作品なんだなと感じる。活版でつくられた初版、手にとってみたいなぁ。

もうほとんど何もかも終えてしまったんじゃないかと僕は思う。間違っていたらごめんなさい。

僕は「こうもり」と呼ばれ、崖っぷちの家にひとりで暮らしながら、石炭を選り分ける仕事をしている。高級な石炭である〈貴婦人〉を見つけ出す天才だった祖父が亡くなり、家と仕事を引き継いだのだ。机と電話機しか置いていない〈でぶのパン屋〉の固いパンを、毎日食べるようになったある日、公園のベンチで居合わせた体格のいい男のひとに英語で話しかけられた。が、意味はさっぱり理解できない。長い話の最後に、彼はひと言「おるもすと」と云った。

世田谷文学館開館20周年記念企画として限定販売され完売した幻の作品に、書き下ろしエッセイを加えた特別版!

吉田 篤弘:おやすみ、東京 ☆☆☆☆☆

img_0

東京、ならでは。

東京、午前一時。この街の人々は、自分たちが思っているよりはるかに、さまざまなところ、さまざまな場面で誰かとすれ違っている―映画会社で“調達屋”をしているミツキは、ある深夜、「果物のびわ」を午前九時までに探すよう頼まれた。今回もまた夜のタクシー“ブラックバード”の運転手松井に助けを求めたが…。それぞれが、やさしさ、淋しさ、記憶と夢を抱え、つながっていく。月に照らされた東京を舞台に、私たちは物語を生きる。幸福な長篇小説。滋味深く静かな温もりを灯す、12の美味しい物語。

ジョルジュ・ガショ : ジョアン・ジルベルトを探して ☆☆☆・・


最後まで謎の多い人物のまま。

「イパネマの娘」「想いあふれて」などで知られ、「ボサノバの神様」と称されるブラジルの伝説的ミュージシャン、ジョアン・ジルベルトの行方を追った音楽ドキュメンタリー。卓越したギター演奏と甘美な歌声で世界中の音楽ファンを魅了したジョアン・ジルベルト(2019年7月に他界)は、08年8月にリオ・デ・ジャネイロでのコンサート出演を最後に、公の場に姿を現すことがなくなってしまった。それから10年、ドイツ人ジャーナリストのマーク・フィッシャーは、ジルベルトに会うためにリオ・デ・ジャネイロに向かったが、結局会うことはかなわなかった。その顛末を記した本が出版される1週間前、フィッシャーは自らの命を断ったという。彼の旅に強く共鳴したフランス生まれでブラジル音楽をこよなく愛するジョルジュ・ガショ監督が、フィッシャーの夢を実現させるため、ブラジル中をくまなく歩き、ジルベルトゆかりの人びとや土地を訪ねていく。

ヨーナス・バリヘル ミカ・ホタカイネン : サウナのあるところ ☆☆☆・・

男はみんな表には出さず、静かに悩んでたり苦しんでる。
サウナでは少しだけ心が開放される。

サウナの本場といわれるフィンランドのサウナ事情とそこに集う人々を記録した異色ドキュメンタリー。自宅やオフィスなどのプライベートなサウナから、湖畔や街なかの公衆サウナまで、約550万人の人口に対して約300万個のサウナがあるという北欧の国フィンランド。身も心も裸になれるサウナという場所は、シャイで寡黙と言われるフィンランド人男性たちのさまざまな思いが語られる場所でもあった。継父からの虐待、犯罪歴のあるかつての自分、離ればなれになってしまった娘、止められなかった職場での事故、先に旅立った妻や幼い娘の思い出など、普段は話すことがない悩みや苦しみ。子どもが生まれた喜び、親友との友情、老いてからの出会い、祖父が薪に込めていた祖母への愛など、大切な人への思いの数々。男たちが普段は決して語ることのないさまざまな思いがサウナという空間で語られ、男たちの絆を深めていく。

マッテオ・ガローネ : ドッグマン ☆☆☆・・

共感するところもあったけど、あんまり気分のよい映画じゃなかったな。

「ゴモラ」などで知られるイタリアの鬼才マッテオ・ガローネ監督が、1980年代にイタリアで起こった実在の殺人事件をモチーフに描いた不条理ドラマ。イタリアのさびれた海辺の町。娘と犬を愛する温厚で小心者の男マルチェロは、「ドッグマン」という犬のトリミングサロンを経営している。気のおけない仲間たちと食事やサッカーを楽しむマルチェロだったが、その一方で暴力的な友人シモーネに利用され、従属的な関係から抜け出せずにいた。そんなある日、シモーネから持ちかけられた儲け話を断りきれず片棒を担ぐ羽目になったマルチェロは、その代償として仲間たちの信用とサロンの顧客を失ってしまう。娘とも自由に会えなくなったマルチェロは、平穏だった日常を取り戻すべくある行動に出る。主演のマルチェロ・フォンテが第71回カンヌ国際映画祭で主演男優賞を獲得したほか、イタリア版アカデミー賞と言われるダビッド・ディ・ドナテッロ賞で作品賞・監督賞など9部門を受賞した。

吉田 篤弘:針がとぶ – Goodbye Porkpie Hat ☆☆☆☆・

img_0

小川洋子さんのあとがきがまさに。

伯母が遺したLPの小さなキズ。針がとぶ一瞬の空白に、いつか、どこかで出会ったなつかしい人の記憶が降りてくる。遠い半島の雑貨屋。小さなホテルのクローク係。釣りの好きな女占い師…。ひそやかに響き合う、七つのストーリー。

梨木香歩:椿宿の辺りに ☆☆☆☆・

img_0

いつもより少しコミカル。でも相変わらず、現代人にとって大事にした方がよいことをやんわりと味あわせてくれる。

深遠でコミカル、重くて軽快。
著者五年ぶりの傑作長編小説。

自然、人間の体、こころの入り組んだ痛みは
家の治水、三十肩、鬱と絡み合い、主人公を彷徨えるツボ・椿宿へと導く。

皮膚科学研究員の佐田山幸彦は三十肩と鬱で、従妹の海子は階段から落ち、ともに痛みで難儀している。なぜ自分たちだけこんな目に遭うのか。
外祖母・早百合の夢枕に立った祖父から、「稲荷に油揚げを……」の伝言を託され、山幸彦は、鍼灸師のふたごの片われを伴い、祖先の地である椿宿へと向かう。
屋敷の中庭には稲荷の祠、屋根裏には曽祖父の書きつけ「f植物園の巣穴に入りて」、
明治以来四世代にわたって佐田家が住まいした屋敷には、かつて藩主の兄弟葛藤による惨劇もあった。
『古事記』の海幸山幸物語に3人目の宙幸彦が加わり、事態は神話の深層へと展開していく。
歯痛から始まった『f植物園の巣穴』の姉妹編。

マーリオ・リゴーニ ステルン:雷鳥の森 ☆☆☆・・

img_0
帯のコピーのとおり、「戦争の記憶、森の静寂、野生の動物」。
でも雷鳥を撃たないでほしい。

イタリア兵のロシア撤退を描いて現代の『アナバシス』ともいわれる傑作『雪の中の軍曹』。
その著者リゴーニ・ステルンの深く静かで豊かな世界を、
戦争と狩猟を題材とするこの短篇集、『雷鳥の森』は、こよなく伝えてくれる。

プリーモ・レーヴィは、二つの奇蹟だと書いている。
「まず第一に彼が生き延びたということ(…)
さらに現にいまのような人間であり、正統であるべく己を律してきたということ」。

八十歳を越えたいまも、北イタリアの小さな町に暮らし、
森に入り、畑を耕しながら、書きつづける孤高の作家は、
人生と野生を考える道しるべともなるだろう。

ロン・マン : カーマイン・ストリート・ギター ☆☆☆☆・

木と対話する仕事、天職。
そして、ビル・フリゼールのサーファー・ガール!

ニューヨークの建築物の廃材を使ったギター作り続ける老舗ギターショップを追ったドキュメンタリー。グリニッジ・ビレッジにあるギターショップ「カーマイン・ストリート・ギター」。寡黙なギター職人のリック・ケリー、見習いのシンディ、リックの母親の3人で経営しているこの店では、ニューヨークの建築物の廃材を使いギターを製作している。チェルシー・ホテルやニューヨーク最古のバー・マクソリーズなどの廃材をリックが持ち帰り、ギターとして復活させることで、長年愛されてきた街の歴史がギターの中に生き続ける。ビル・フリゼール、マーク・リーボウ、チャーリー・セクストンといったギタリスト、映画監督ジム・ジャームッシュも訪れるギターショップのある1週間を追っていく。監督は「ロバート・アルトマン ハリウッドに最も嫌われ、そして愛された男」など、ポップカルチャーを題材にしたドキュメンタリーを数多く手がけるロン・マン。2018年・第31回東京国際映画祭「ワールド・フォーカス」部門上映作品。

福永信:実在の娘達 ☆☆☆☆・

img_0

文字を見ているだけで素敵な気分に。

小説家、福永信5年ぶりにして6冊目の短編小説集。「IMA」「花椿」、そして金氏徹平の「tower(THEATER)」に綴られた3つの掌編が収録されています。⁣3編が「活版」、「写真植字+軽オフセット」、「DTP+オフセット」と、それぞれ異なる印字・印刷方法で仕上げられています。

ポール・オースター:写字室の旅 ☆☆・・・

img_0

コアなファンじゃない、と。

彼はどこに行くのか。どこにいるのか――未来を巡る、新しいラビリンス・ノベル。奇妙な老人ミスター・ブランクが、奇妙な部屋にいる。部屋にあるものには、表面に白いテープが貼ってあって、活字体でひとつだけ単語が書かれている。テーブルには、テーブルという言葉。ランプには、ランプ。老人は何者か、何をしているのか……。かつてオースター作品に登場した人物が次々に登場する、不思議な自伝的作品。

IMA vol.28 ☆☆☆☆・

img_0

スティーブン・ギル!

特集 「スティーブン・ギルのすべて」

スティーブン・ギルを知っているだろうか。
メディアに姿を現す機会が少ないため、その全貌はあまり知られていないが、
ロンドンに生まれ、現在はスウェーデンの片田舎で創作する彼の活動の歴史を遡ると、
さまざまな意味で極めて21世紀らしい写真アーティストでもあることがわかる。
シリーズごとにテーマや手法が刻々と変遷し、進化するクリエーションのスタイルは、
写真というメディアと真摯に向き合いながら、丁寧に制作を続ける彼なりの答えだ。

子どものようなまっすぐな無邪気さと、創造者としての厳しさを備えながら、
私たちを魅了してやまない人となりと作品のすべてに迫る。

■最新作「The Pillar」
■スティーブン・ギル/インタヴュー
少年時代の写真との出会いから、最新作「The Pillar」までの道のり
■スティーブン・ギル 作品アーカイヴ

■年表でたどるスティーブン・ギルの軌跡
■現代の錬金術師/リュス・ルバール
■あの人が選ぶ とっておきのこの一枚
■パラレルジャーニーが交差する場所 対談/スティーブン・ギル & 川内倫子

■スティーブン・ギルが心をつかまれた名作
アーティストたちが切り開いてきた表現は、時にスティーブン・ギルを励まし、突き動かしてきた。
ギルがその素晴らしさに尊敬の念を抱く、選りすぐりの作家たちの作品を、彼のキュレーションとテキストで紹介する。

■スティーブン・ギルが選ぶアートブック20冊
■お気に入りのレコードリスト
■マーカス・シャーデン&フレデリック・レズミ/インタヴュー

■追悼 ジョナス・メカス
享年96歳でこの世を去る直前までカメラを回してきた映画人、ジョナス・メカス。紆余曲折の人生とその偉業を偲ぶ。

■写真家の食卓 vol.5
潮田登久子×島尾伸三×しまおまほ×梅 佳代

浦松 佐美太郎 : たった一人の山 ☆☆☆・・

img_0

スイスの山々の旅記録。その当時ののどかな空気が伝わってくる。優雅な人生だなぁ。

山を見つめ、自分の心を見つめながら、雪と岩との非情の世界に命をかけた青春の日々―。昭和初期のアルプスの山々を舞台に描く、山岳文学不朽の名著。

梨木 香歩 : 冬虫夏草 ☆☆☆☆・

totsukaso

山野の旅の楽しさ、魅力を堪能。カッパやイワナに出会いたい。

疏水に近い亡友の生家の守りを託されている、駆け出しもの書きの綿貫征四郎。行方知れずになって半年あまりが経つ愛犬ゴローの目撃情報に加え、イワナの夫婦者が営むという宿屋に泊まってみたい誘惑に勝てず、家も原稿もほっぽり出して分け入った秋色いや増す鈴鹿の山襞深くで、綿貫がしみじみと瞠目させられたもの。それは、自然の猛威に抗いはせぬが心の背筋はすっくと伸ばし、冬なら冬を、夏なら夏を生きぬこうとする真摯な姿だった。人びとも、人間にあらざる者たちも…。『家守綺譚』の主人公にして新米精神労働者たる綿貫征四郎が、鈴鹿山中で繰り広げる心の冒険の旅。

梨木 香歩 : 海うそ ☆☆☆☆☆

umiuso

歴史の「跡」を追うフィールドワークはどうしてこんなに楽しいのでしょう。修験道や土着信仰となるとなおさら。
一晩で読み終えてしまいました。

ただただ無心に漏れ来る光の林よ
昭和の初め、人文地理学の研究者、秋野がやって来た南九州のとある島。山がちなその島の自然に魅せられた彼は、踏査に打ち込む――。歩き続けること、見つめ続けることによってしか、姿を現さない真実がある。著者渾身の書き下ろし小説。

Useful Photography #005 ☆☆☆☆・

4916094867
なかなかの見応えです。

Collected & Edited by Hans Aarsman, Claudie de Cleen, Julian Germain, Erik Kessels, Hans van der Meer.
A standard method is used worldwide to photograph cows and bulls. These photographs allow farmers to examine the qualities of different types of breeds in order to facilitate mating and the propagation of different family lines. Useful Photography #005 presents the legendary bull Lord Lily, alongside a small selection of his more than 150.000 descendants. Colour, 210 x 297mm, 88 pages, saddle stitched, soft cover

上田義彦 : クゥィノルト ☆☆☆☆・

4916094867
前から欲しかった。VACANTのセールで格安購入できた。

アメリカインディアンによって名付けられた2つの森の奥深くに分け入り、原初の状態を思わせる森林内部を大型カメラで捉えた写真集。うっそうと茂る羊歯やコケに覆われた樹木の蒼く薄暗い光景には、重い静謐が横たわる。

ジュンパ・ラヒリ (著), ミランダ・ジュライ (著), アリス・マンローほか : 美しい子ども ☆☆☆☆・

4105901044

実績と信頼のクレスト・ブックス品質。

短篇小説はこんなにも自由だ――。
新潮クレスト・ブックス創刊15周年特別企画。
フランク・オコナー国際短篇賞受賞の3作を含む、シリーズの
短篇集11冊から選りすぐった現代最高のアンソロジー。

〈新潮クレスト・ブックス〉の創刊15周年を記念して、
フランク・オコナー国際短篇賞受賞の3作――ミランダ・ジュライ
『いちばんここに似合う人』、ジュンパ・ラヒリ『見知らぬ場所で』、
ネイサン・イングランダー『アンネ・フランクについて語るときに
僕たちの語ること』――を含む短編集11冊のなかから厳選したアンソロジー。

アリス・マンロー、ベルンハルト・シュリンク、リュドミラ・ウリツカヤら
ベテランから、短篇の名手アンソニー・ドーア、表題作「美しい子ども」を
書いたベルギーの俊英ディミトリ・フェルフルストまで、
とびきり面白い短篇小説12篇をご堪能ください。

やなせたかし : わたしが正義について語るなら ☆☆☆☆・

459113735X
うん、正義です。

正義とはなにか。絶対的な正義なんてないし、正義はある日逆転する。正義のためには悪人がいなくちゃいけないし、悪人の中にも正義がある。正義を生きるのは大変だけれども、その中で僕たちが目指すべき正義とは―。私たちの絶対的なヒーロー「アンパンマン」の作者が作中に込めた正義への熱い思い!

Yoshihiko Ueda : M. River ☆☆☆☆☆

main-001

良いギャラリーと良い写真。珠玉の組み合わせでした。

森へ入り、森をでる
上田義彦は、写真家である。もし彼に、アーティストと呼びかけたなら、かたくなにそれを拒むだろう。大きなボックスカメラを背おい、屋久島の山道を登ってゆく上田義彦の姿を想いうかべる。それはかつて、北米のネイティブアメリカンの聖地QUINAULTにおいても行われたことであり、しかし重要なのは、彼が世に名づけられるネイチャーフォトグラファーなどでは決してないということだ。「上田義彦の写真」において、「森へ入る」ということは、彼の写真行為において欠くべからざる過程であり、それは「修業」などという安易な言葉すら超えて、上田義彦が考える写真のあり様の根本にかかわるものと思われる。写真家・上田義彦における森とは何か。そのことを僕はずっと並走し、考えてきた。そして今また、『M.River』という写真群を前にして、そのことをさらに考えたいと強く思う。
写真は事物を写し撮るものだが、ことはそう単純ではない。私たちはモノを見る。眼を使い、視覚により世界を認知する。とりこまれた視覚像はイメージとして記憶化される。極論すれば写真という機械の出現以前にも、写真という衝動は存在した。文学者マルセル・プルーストはそれを、「潜像」と呼んだが、彼が残した写真についての思考の断片は、写真が誕生してまもない時期の「実感」を我々におしえてくれる。「見る」あるいは「観る」という過程について、あるいは「まなざし」「イメージ」についての多様な力は、写真出現以前から人間の内で、ダイナミックに動いていたのである。写真という無垢な機械は、人間にとり無垢な他者ゆえに、人間に恩寵を与えることになったのだ。
その恩寵はいくつもある。たとえば、「まなざし」について。写真は事物の記録であるが、実は撮り手の「まなざし」の記録である。「まなざし」とは、例えば、誰かが景色を見ているのを見ればわかる。彼のように私も見ているということが「まなざし」の意識化ということだ。我々は世界を見ているが、写真という装置は、我々に見ることの再確認をしいる。「まなざし」を客観化し、自覚するということだ。その意味で写真は、「写真出現以前」にすでにある内的衝動を可視化し、カタチを与えるということに他ならない。したがって、すぐれた「写真の力」は、被写体の細部の力だけではなく、「まなざし」の伝染をひきおこす。写真集やプリントは、他の人の「まなざし」に没入することを拡張していく。このことは、精神分析医のジャック・ラカンが指摘し、それをヒントにロラン・バルトが写真へのアプローチとしたことであった。

いしい しんじ : ある一日 ☆☆☆☆☆

514ZNPupqXL._SS500_

ヒトが生まれる瞬間の感動と涙。ヒトのことが好きになれる一冊。

こんどこそ生まれてきてくれる――。赤ん坊の誕生という紛れもない奇跡。京都、鴨川にほどちかい古い町屋に暮らす四十代の夫婦のもとに、待ちに待った赤ん坊が誕生する。産みの苦しみに塗りこめられる妻に寄り添いながら、夫の思いは、産院から西マリアナ海嶺、地球の裏側のチリの坑道まで、遠のいてはまた還ってくる。陣痛から出産まで、人生最大の一日を克明に描きだす、胸をゆすぶられる物語。

吉田篤弘 : イッタイゼンタイ ☆☆☆・・

41wvK0OBrML._SS500_

「なおす」という言葉がふたつの意味を持った。かつて「殺し屋」と呼ばれていた者は「なおし屋」となり、かつて「修理屋」と呼ばれていた者も「なおし屋」と呼ばれている。男はこわれたものをなおし、女は男をなおしてゆく。都会の片隅のシュールでコミカルな日常と秘密を描く現代の寓話。

小倉 美惠子 : オオカミの護符 ☆☆☆☆・

1106107907
これを読んで、三峰神社に行きました。

五〇世帯の村から七〇〇〇世帯が住む街へと変貌を遂げた、川崎市宮前区土橋。長年農業を営んできた著者の実家の古い土蔵で、護符がなにやら語りかけてくる。護符への素朴な興味は、謎を解く旅となり、いつしかそれは関東甲信の山々へ―。都会の中に今もひっそりと息づく、山岳信仰の神秘の世界に触れる一冊。

今井智己 : Semicircle Law ☆☆☆☆☆

55317505

これはすごい。

『真昼』(青幻舎刊、2001年)や『光と重力』(リトルモア刊、2009年)など、今井は街路や森、部屋といった日常的な風景を写した作品を発表してきた今井智己の写真集。本書は政府が原発から半径20km圏内を「警戒区域」に設定し、立ち入り制限を始めた4月22日の前日から、原発の方角をフレームの中心に据えるという一定のルールに基づいて撮影された写真をまとめたもの。原発事故についてのいかなる意見を代弁することなく、ただ、私達がこの未曾有の大事故を「見ているようで実は見ていない」ことを示すかのようです。
1000部限定。エディションナンバー付、サイン本。

宮本 常一 : 山に生きる人びと ☆☆☆☆・

yama2

いろんな職業がありました。木地や杓子には特にシンパシーを感じます。

山には「塩の道」もあれば「カッタイ道」もあり、サンカ、木地屋、マタギ、杣人、焼畑農業者、鉱山師、炭焼き、修験者、落人の末裔…さまざまな漂泊民が生活していた。ていねいなフィールドワークと真摯な研究で、失われゆくもうひとつの(非)常民の姿を記録する。宮本民俗学の代表作の初めての文庫化。

宮本 常一 : 日本文化の形成 ☆☆☆☆・

51B9E8YFH5L._SS500_

ヱビス、夷、蝦夷。
倭人より先に日本にいた人たち。

日本列島を徹底踏査した民俗学の巨人が、『古事記』『日本書紀』『万葉集』『風土記』などの古代文献を読み返し、それらと格闘の末、生まれた日本文化論。稲作を伝えた人びと、倭人の源流、畑作の起源と発展、海洋民と床住居など、東アジア全体を視野に入れた興味深い持論を展開する。長年にわたって各地の民俗を調査した著者ならではの着想を含む遺稿。

宮本 常一 : 生きていく民俗 —生業の推移 ☆☆☆☆・

ikiteiku

著者のフィールド調査の徹底ぶりに感服する一冊。

海の民、山の民、川の民、村の民、町の民。それぞれの職業との関わりとその変遷、またお互いの交流・交易のありようとその移り変わりの実態を、文献渉猟、徹底したフィールド調査、そして刻明な記憶をまじえながら解明していく、生業の民俗学の決定版。差別・被差別の民俗学とも深く結び着いてゆく。

ヴェルナー・ヘルツォーク : 輝く峰 ガッシャーブルム ☆☆☆☆・

dspDimg.cgi

ラインホルト・メスナー。かっこいい。

なぜ人間は山に魅せられるのか? 『輝く峰 ガッシャーブルム』において、伝説の登山家ラインホルト・メスナーたちは8千メートル級の峰に連登という難題に挑む。白い砂漠の中で監督は登山家たちに問う。何が彼らをそこまで駆り立てるのか? ヘルツォーク監督は不可能に挑む人間の狂気を追う。何かに取り付かれた人間の眼の、どこまでも澄み切った深みをカメラが捉えている。
『バケのカムバック』の舞台はアルプス。今は亡き親友と初登攀したミディ南壁に、モーリス・バケが32年の時を経て挑む。青空を背にほぼ垂直の岸壁をゆく人々は、しかしその危うさを忘れてしまうほどに愉しげである。頂からの景色、若き登山家クリストフ・プロフィの逞しさと健やかさ。岩峰に口づけるバケ。そしてチェロの音色。爽やかさが胸に残る追憶のドキュメンタリー。

ポール・オースター : ブルックリン・フォリーズ​ ☆☆☆☆・

brooklynfollies

彼の作品の中では異端なポジションか。なんだかポジティブで陽気です。

幸せは思いがけないところから転がり込んでくる──傷ついた犬のように、私は生まれた場所へと這い戻ってきた──一人で静かに人生を振り返ろうと思っていたネイサンは、ブルックリンならではの自由で気ままな人々と再会し、とんでもない冒険に巻き込まれてゆく。9・11直前までの日々。オースターならではの、ブルックリンの賛歌、家族の再生の物語。感動の新作長編。

井上 靖 : 氷壁 ☆☆☆・・

G.W.に山に入れなかったので、少しだけでも山気分を味わうために読みました。
読みやすかったけど、『神々の山嶺』の方が面白かったかな。

奥穂高の難所に挑んだ小坂乙彦は、切れる筈のないザイルが切れて墜死する。小坂と同行し、遭難の真因をつきとめようとする魚津恭太は、自殺説も含め数々の臆測と戦いながら、小坂の恋人であった美貌の人妻八代美那子への思慕を胸に、死の単独行を開始する…。完璧な構成のもとに雄大な自然と都会の雑踏を照応させつつ、恋愛と男同士の友情をドラマチックに展開させた長編小説。

ホンマタカシ : ニュー・ドキュメンタリー(図録) ☆☆☆☆・

ニュー・ドキュメンタリーの図録。

写真表現の第一線で活躍するホンマタカシの美術館での初個展をまとめた展覧会。木村伊兵衛写真賞を受賞した99年以降の近作を中心に、写真の連作や、写真を版画化した新作、インスタレーション、映像などホンマの仕事の全貌を紹介する。
 図録はソフトカバーで全作品をシリーズごとにフルカラーで掲載するほか、ホンマのこれまでの代表的な写真集を紹介したレゾネや図録でのみ発表された作品も収録する。セクションごとに違う6種の用紙を使用した凝ったデザインの図録は、ホンマの作品を網羅する他にはない内容。

Wolfgang Tillmans : interviews ☆☆☆☆・

1度目のインタビューは原書で買って、ちんぷんかんぷんだったので、今回は和訳で。和訳でも難しい。

ハンス・ウルリッヒ・オブリスト(美術評論家、キュレーター)による2度のインタビューと、ホルガー・リープス(アートライター)による、ヴェニス・ビエンナーレ出品作についての最新インタビューを、日本語訳で初の完全収録。参照図版31点。森大志郎デザインによるテキストシリーズ第2弾。

クレア・キップス : ある小さなスズメの記録 人を慰め、愛し、叱った、誇り高きクラレンスの生涯 ☆☆☆☆☆

泣きます。かなり。

第二次世界大戦中のロンドン郊外ブロムリーで、足と翼に障碍を持つ生まれたばかりの小スズメがキップス夫人に拾われる場面からストーリーが始まる。夫人のあふれんばかりの愛情に包まれて育ったスズメのクラレンスはすくすくと育ち、爆撃機の襲来に怯える人々の希望の灯火となっていく――。
キップス夫人がクラレンスと共に生き最期をみとるまでの12年間を綴ったこの実話は、イギリスで1953年に出版されたのを皮切りに、発刊後すぐに大きなセンセーションを巻き起こし、わずか1年半ほどの間に10版を重ねた。さらには、アメリカ、イタリア、スウェーデン、デンマーク、ドイツ、フィンランド、オランダ、インドでも続々と翻訳出版され、ベストセラーとなり当時大変な話題となった。キップス夫人の許には、世界中の読者から毎日多くの手紙が送られてきたという。
この度、この名作が、梨木香歩による心のこもった新訳でよみがえった。鳥に詳しくイギリスで暮らしていた梨木ならではの完訳である。

リチャード・ブローディガン : エドナ・ウェブスターへの贈り物 故郷に残されていた未発表作品 ☆☆☆☆☆

こちらに記録しわすれてました。とにかくありがたく味わいました。

ブローティガンの初期未発表作品集
無名の青年が、詩や散文を記した原稿を、恋人の母親に託した。「エドナ、ぼくが金持ちで有名になったら、これはあなたの社会保障手当に役立つよ」。初期ブローティガンの瑞々しい未発表作品。

中沢 新一 : 森のバロック ☆☆☆・・

実は2回目。初めて読んだときは南方マンダラが理解できず挫折。
そして今回もやっぱりむずかしくてよく消化できませんでしたが、前回よりも少しだけ理解が進んだ気がします。
この本が、その後の「対称性人類学」シリーズのきっかけになったことはよく分かりました。
少し仏教の勉強をしてから再読しようと思います。いつかはしっかり南方マンダラを理解するぞ!

生物学・民俗学から神話・宗教学に精通、あらゆる不思議に挑んだ南方熊楠。那智の森の中に、粘菌の生態の奥に、直観された「流れるもの」とは何か。自然や人間精神の研究の末織り上げられた南方マンダラの可能性とは?後継者のいない南方熊楠の思想、「旧石器的」な思考の中に、著者は未来の怪物的な子供を見出す。対称性理論への出発点となった記念碑的著作。

中沢 新一 : 対称性人類学 カイエ・ソバージュ <5> ☆☆☆☆・

なかなか難しいところもありましたが、未来を考えて行く上では大事で、今のところもっとも望ましい思想のような気がしています。あとは日常においてどこまで実践できるか、しっかり考えて行動する必要がありそうです。

なにかに区切りがつくときというのは、達成感とともに一抹の寂しさが湧いてくるものだ。全5冊にわたるシリーズの完結ともなれば、なおさらだろう。「超越的なもの」をめぐる人類の思索史カイエ・ソバージュ。その最終巻である本書では、これまで重ねてきた考察を踏まえ、来たるべき時代の思想を模索する。
かつて世界は人間と動物、個人と全体を区別することのない「対称性」の思考に彩られていた。そこでは支配 ― 被支配の隔てもなく、死と生の間にすら決定的な差異は認められていなかった。ところが、国家や一神教に象徴される「非対称性」の力が世のすみずみまで行きわたった結果、あらゆるところで深刻ないきづまりが生じているのだ。人類の本質が「対称性」にあるため、「非対称性」の社会では必然的に閉塞へ追い込まれていくのである。

とはいえ、今さら国家のない時代に戻ることなどできるはずもない。そこで示されるヒントのひとつが仏教である。じつは、仏教こそ対称性を極限まで磨きあげた思想なのだ。ここでは人間と動物は同じ「有情(うじょう)」(意識のある存在)であり、輪廻の輪の一部にすぎない。ゆえに、人は自然に対して倫理的にふるまうのである。こうした認識こそが、一神教型の世界を乗り越える原動力になるのではないか、と本書はいう。むろん、これはあくまで一つの理想型であるが、このように、ただ現状を分析するだけでなく、「ならば、どうしたらいいか」というところにまで踏み込む逞(たくま)しさが、中沢新一の魅力だろう。

 著者もいうように、「対称性」を回復する試みはいままさに始まったばかりである。むしろ、スタートラインに立つためにこそ、この長いシリーズは語られてきたのかもしれない。知の冒険はこれからも果てなくつづいていく。だからこそ、講義の最後に発せられた「また会いましょう」という一言がいっそう感動的に響くのである。(大滝浩太郎)

Josef Sudek : Josef Sudek (Fototorst) ☆☆☆☆・

静かでやさしい、けど少し寂しげなまなざしが感じられます。彼も世の中の事物を等価に見ているひとりのような気がします。

Dubbed the “poet of Prague,” Josef Sudek was one of the most important and celebrated of Czech photographers. Sudek produced his best work during his middle-aged years, having grown up and out of the rules of Modernism and into a style of his own. Whereas his photographs from the 1930s are mainly a reflection of the external world, by the 1940s he was returning to himself, finding his own unique creative path. It was during this period that he made his most famous photograph, a view of the world seen through his studio window, the window ledge doubling as a stage for still life objects–a setup which he repeated to great effect. Not even the pressures of WWII and the difficult postwar years, including the demands of socialist realism in the arts, interrupted the continuity of his oeuvre. Edited by Anna Farova. Paperback, 6 x 7 in./154 pgs / 0 color 0 BW80 duotone 0 ~ Item D20076

ホンマタカシ : trails ☆☆☆☆・

表紙がかわいいですね。

雪山の道なき道を、血が進む。
血は、自らの意思か、他者の意思によってか、どうどうと流れる川を渡り、急斜面を上る。
白い雪をキャンバスに、そこに乱立する枝と無軌道に這う血が織りなす出来事をとらえたホンマタカシの写真は、アブストラクトな世界を見せる。

わたしたちはただ、“生きもの”が“もの”になるまで、それが残した跡を目撃する。
(YEBISU ART LABOさんより転載)

中沢 新一 : 熊から王へ―カイエ・ソバージュ〈2〉 ☆☆☆☆☆

これまで自分が「宮沢賢治」「南方熊楠」「レヴィ=ストロース」「マタギ」「東北」等々に惹かれてきた理由、ここにありました。あぁ、とてもすっきり。
このシリーズ、とてもためにもなって面白いです。

「対称性」視点で世の中を見ることをこれからもっと意識的に行っていこう。

米同時多発テロと神話学――。この2つが根本のところでかかわっていると聞けば、異様な感じを受ける向きも多いだろう。だが、テロであれその報復であれ、すべての「野蛮」は神話的価値観の終焉がもたらしたといえるのだ。
本書は「超越的なもの」について、太古から人類が巡らせてきた思索を追うシリーズの第2巻。原初の共同体が崩壊し、王と国が生まれるまでを考察する。

著者はアムール川流域やサハリン、北米、南米などに伝わる数多くの神話を分析、自然と人間が互いに尊重し、交流していた社会の姿を探り出してゆく。ここでは、人と動物が単なる狩り狩られる関係ではなく、人間も毛皮をまとえば獣となり、雌とつがって子を産ませるというような伝承が生じる。また、無差別に動物を殺戮することなどありえず、生きるために殺しはしても、骨や毛皮は敬意をもって扱われた。人と自然が相互に往き来できる世界、いわば「対称性の社会」なのだ。こうした世界では、「権力」は本来、自然が持つものであり、社会の外にあった。人間のリーダーである「首長」は、交渉や調停といった「文化」の原理で集団を導く者だったのだ。だが、この「権力」が共同体内部に持ち込まれたとき、人間と自然は隔絶し、首長は王となって、国が生まれた。「権力」を取り込むことで成立した「国」は、人や自然を一方的に支配しようとする宿命を持つ。ゆえに国家というものは本質的に野蛮をはらんでいるのだ、と著者は言う。

本書のもとになった講義は、同時多発テロの直後に開始された。その影響は色濃く、本文のなかでも、文化とは何か、野蛮とは何かという問いかけがしばしばなされている。著者は国家という野蛮に抗しうる思想として、仏教の可能性を考察する。ブッダの生家は共同体に近いような小邑の首長であり、この出自が仏教の性格に影響を及ぼしているという。とすれば、原初の精神が21世紀の混迷を照らすということになるだろう。きわめてダイナミックな構図だが、こうした示唆こそ神話を学ぶ意味なのかもしれない。(大滝浩太郎)

吉田 篤弘 : 小さな男 * 静かな声 ☆☆☆・・

読み終えたときの心地よさは相変わらずです。
こちらの作品は「ウフ.」に連載していたようですね。
昔、「ウフ.」よく読んでました。春に休刊になってしまった、とのこと。残念ですね。

□いまは独り身である。
□友だちはあまりいない。
□引き出しから、思いがけないガラクタが出てきたことがある。
□自転車に乗れる。
□自由奔放な弟/妹になれたら、とときどき思う。
□道に迷いがちである。
□小さなものが好きである。
2つ以上あてはまるものがあれば、どうぞページをおめくりください。
煌めくことばの宝箱。待望の2年ぶりの新作小説!

展覧会:ホンマタカシ「トレイルズ」☆☆☆☆・

これまでの彼の作品の中では、一番好きかも。
写真集ももちろん買ってきました。

きれいなこと、たのしいことばかりでなく、きちんと目をそらさずに向き合わなければいけないこともある、と思うのです。

展覧会名:ホンマタカシ「トレイルズ」
会期:2009年05月08日 ~ 2009年05月30日
会場:GALLERY 360°
〒107-0062 港区南青山5-1-27-2F
TEL 03-3406-5823
営業時間:月~土 12:00 – 19:00 休廊:日曜日・祝日

熊谷 達也 : 邂逅の森 ☆☆☆・・

直木賞と山本周五郎賞のダブル受賞の作品。ドラマチックですがマタギの生き方が生き生きと伝わってきます。

秋田の貧しい小作農に生まれた富治は、伝統のマタギを生業とし、獣を狩る喜びを知るが、地主の一人娘と恋に落ち、村を追われる。鉱山で働くものの山と狩猟への思いは断ち切れず、再びマタギとして生きる。失われつつある日本の風土を克明に描いて、直木賞、山本周五郎賞を史上初めてダブル受賞した感動巨編。

安田 喜憲 : 日本よ、森の環境国家たれ ☆☆☆・・

環境考古学の先生の本。「森の民」と「家畜の民」の違いを、歴史的・地理的にとてもすっきり、わかりやすく教えてくれます。
私たち日本人が「森の民」として森(地球環境)と共に生きる生き方の重要性・必然性を再確認できる本です。

人類文明史には「森の民」の「植物文明」と「家畜の民」の「動物文明」の二類型があるというのが、本書の最大の発見である。「森の民」の「稲作漁撈民」は桃源郷を、「家畜の民」の「畑作牧畜民」はユートピアを創造した。桃源郷こそ「森の民」の究極の生命維持装置だった。だが、人類文明史は、一面において後者の「動物文明」が前者の「植物文明」を駆逐する歴史であった。そうした中で「森の民」日本人は「家畜の民」に蹂躪されへこたれたことが一度もなかった。日本人が森にこだわり「森の環境国家の構築」に邁進するかぎり、日本の未来は安泰であるというのが、本書の提言である。

工藤 隆雄 : マタギに学ぶ登山技術 ☆☆☆☆・

ソフトタッチな本ですが、伝説のシカリ、鈴木松治さんをはじめ、実際のマタギの方々のインタビューをベースとしたすごく貴重な本。
ハイキング程度のなんちゃって山好きの私ですが、「雪崩にあったときの対処法」「道に迷ったときの対処法」などなど…参考…になりました。

山のプロが教える古くて新しい知恵

増浦行仁 : 天狗の棲む山―最後の修験道の聖地 ☆☆☆☆・

前の会社の大先輩に、私の前世が「山伏」であると御伝えしたところ、その方からこちらの本を頂きました!(Hさん、ありがとうございます!)。

疾走感と共に、修行の場の迫力ががんがん伝わってきます。
その辺のなんじゃくいドキュメンタリーとは比べ物になりません。
素晴らしい写真集です。

その山には天狗が棲むといふ。俗を捨て、じねんの魂に昇るとき、天狗は御姿をあらわすといふ-。「幻の修行」と呼ばれる福岡・英彦山の峰入修行に写真家としてはじめて撮影を許された著者が、その神秘を追ったドキュメント。

熊谷 達也 : 山背郷 ☆☆☆☆・

短篇ながらどれも心に残る作品ばかり。解説のとおり、現代人の生き方ではなかなか体感することが難しい「大自然と共生」「生の力強さ」がありました。
流れるような文章で非常に読みやすくどんどん作品の世界感に惹き込まれます。賞を総なめにされているわけだ。

「山背」とは初夏の東北地方に吹く冷たい風のことをいう。その山背が渡る大地で様々な厳しい営みを続け、誇り高く生きる男たち。マタギ、漁師、川船乗り、潜水夫…。大自然と共生し、時に対峙しながら、愛する家族のために闘う彼らの肖像を鮮やかに描き、現代人が忘れかけた「生」の豊饒さと力強さを謳う九編の物語。作家の原点が凝縮された傑作短編集。

James Marsh : Man on Wire ☆☆☆☆・

先月になりますが、バルタバス「シャーマン」と同じく、エルメスギャラリーで観てきました。
Philippe Petit一味のドキュメンタリー。こんな格好いい連中が現代にもいたんですね。
綱渡りは最近、slackliningなんていうキーワードで日本でも流行らそうとしている方々がいらっしゃるようで…。ちょっとやってみたい気もします。

Native New Yorkers know to expect the unexpected, but who among them could’ve predicted that a man would stroll between the towers of the World Trade Center? French high-wire walker Philippe Petit did just that on August 7th, 1974. Petits success may come as a foregone conclusion, but British filmmaker James Marshs pulse-pounding documentary still plays more like a thriller than a non-fiction entry–in fact, it puts most thrillers to shame. Marsh (Wisconsin Death Trip, The King) starts by looking at Petit’s previous stunts. First, he took on Paris’s Notre Dame Cathedral, then Sydney’s Harbour Bridge before honing in on the not-yet-completed WTC. The planning took years, and the prescient Petit filmed his meetings with accomplices in France and America. Marsh smoothly integrates this material with stylized re-enactments and new interviews in which participants emerge from the shadows as if to reveal deep, dark secrets which, in a way, they do, since Petit’s plan was illegal, “but not wicked or mean.” The director documents every step they took to circumvent security, protocol, and physics as if re-creating a classic Jules Dassin or Jean-Pierre Melville caper. Though still photographs capture the feat rather than video, the resulting images will surely blow as many minds now as they did in the 1970s when splashed all over the media. Not only did Petit walk, he danced and even lay down on the cable strung between the skyscrapers. Based on his 2002 memoir, Man on Wire defines the adjective “awe-inspiring.” –Kathleen C. Fennessy

“James Marsh : Man on Wire ☆☆☆☆・” の続きを読む

港 千尋 : レヴィ=ストロースの庭 ☆☆☆☆・

少し前にテレビで見ました。港さんってレヴィ=ストロースさんに興味があるんだ、ヘーと、少し関心を持っていたところ、先日本屋さんで見かけて即買いしました。
これまであまり港さんの写真ってしっかり見たことがなかったのですが、とても気に入りました。いいです。とても。

2008年11月28日に100歳を迎える20世紀最高の思想家への誕生日プレゼント。フランス、ブルゴーニュの森の中にある別荘でくつろぐレヴィ=ストロース夫妻と周辺の風景に始まり、ブラジル、オーストラリア、アジア、ヨーロッパ、沖縄など、レヴィ=ストロースゆかりの神話の大地をめぐる写真集。著者による3本のエッセイを添える。

バルタバス : シャーマン ☆☆☆☆・

久しぶりに映画に行きました。

馬としゃべれるバルタバスさんが1996年に撮った映画。
シベリアからロシアへ、一頭の馬と脱獄者のロードムービー。
荒々しい感じでとても良かったです。
馬愛が伝わってきます。

日時:2009年1月24日 ~2009年2月22日(土日のみ) 14:00/ 17:00(完全予約制/無料)
場所:ル・ステュディオ
   中央区銀座5-4-1 メゾンエルメス10F

瀧本幹也新作展“Iceland” ☆☆☆☆・

ようやく今日行けました。
アイスランドいいところですね。

写真も良かったですが、入り口にあった森本千絵さんから
贈られたアイスランドのジオラマがとてもかっこ良かったです。

展覧会名:瀧本幹也新作展“Iceland”
会期:2008年11月7日(金)~12月15日(月)
会場:GALLERY at lammfromm / ラムフロム東京
〒151-0064 東京都渋谷区上原1-1-21 山口ビル1F
TEL&FAX 03-5454-0450

津田直 写真展「SMOKE FACE」☆☆☆☆・

大判でとらえた風景写真「SMOKE LINE」もとても好きですが、こんな感じの作品&展示もとてもいいです。
それにしてもNADIFF、移転先に初めて行ったのですが、非常にわかりずらいところにありました。あちこちに看板が出てたのでなんとかたどり着けました。

津田直 写真展「SMOKE FACE」
日時:2008年10月30日[木]ー 11月30日[日]
場所:NADIFF GALLERY
詳細はこちら

おっと、資生堂ギャラリーでもやっているんですね。銀座近辺に行く用事、ないかなー。
同時開催:「SMOKE LINE」
日時:2008年10月28日[火]ー 12月21日[日]
場所:資生堂ギャラリー
詳細はこちら

津田は、これまで、各地を旅し自らを風景に溶け込ませる独特の視点で、時を過ごし人々と関わりあうなかで、風景の拡がりや時間の流れを意識した写真表現を発表してきました。
人物を中心とする今回の展示は津田自身も初めて発表するといってもよいものであり、特に作家自身がこだわり続けたフォトグラヴュールにて制作された作品を基に展開いたします。時間と風景と人との関わりに焦点をあてたユニークなコンセプトは、無人のランドスケープと対をなすように同様の意識と風景の拡がりを見せます。写真家の目の内に潜むもうひとつの世界が垣間見ることができるはずです。

原 武史 : “出雲”という思想―近代日本の抹殺された神々 ☆☆☆☆・

面白かった。
近所の文房具屋さんのオジさんが、所蔵の本を50円均一でたたき売りしていたので、その中からピックアップしました(人の所蔵、本棚って面白いですよねー)。

自分が生まれた練馬や今済んでいる幡ヶ谷あたりも「氷川神社」がたくさんありますが「出雲」系だったこと、初めて知りました。
「大宮氷川神社の悲しい歴史」も非常に興味深いです。
また、平田篤胤の研究の視点も面白いですね。
彼はこの「古史」だけでなく、たくさんいろんな分野を勉強された偉い人。水木さん曰く、荒俣宏さんは平田篤胤の生まれ変わりとか。

明治国家における「国体」「近代天皇制」の確立は、“伊勢”=国家神道の勝利であった。その陰で闇に葬られたもう一つの神道・“出雲”。スサノヲやオホクニヌシを主宰神とするこの神学は、復古神道の流れに属しながら、なぜ抹殺されたのか。気鋭の学者が“出雲”という場所をとおし、近代日本のもう一つの思想史を大胆に描く意欲作。

岡沢 憲芙 : スウェーデン―自律社会を生きる人びと ☆☆☆・・

まがりなりにも会社を運営する側としては、なにより「経済システム」がどのような考え方で運営され、その中で企業がどのように活動し、税金を収めたり、雇用を創出したり、社会貢献したりと…その辺がとても気になります。優れた社会システムや政治システムがきちんと機能するためには、経済活動/経済システムが「変わらなきゃ」と強く感じているからです。
そのような話は詳しくこの本には書かれていなかったわけですが、「ワークライフバランス」が「個人」としてはもちろん、「社会」としても重要な点を再認識できました。
「ワーク・ライフ・バランス」もいいけど「ワーク・ソーシャル・バランス」の方が大事かな。

スウェーデンで出産を経験した人、スウェーデンの大学で学んだ人、スウェーデンで休養する人、このようなさまざまな生活と、深い専門的知識をリンクさせて、スウェーデン社会における、生から死に至る一生を通じた生活の話題から、社会の自律性を巡る論考を進めた一冊。

小澤 徳太郎 : スウェーデンに学ぶ「持続可能な社会」☆☆☆☆・

神野さんが考える日本が目指すべき方向性の先にはスウェーデンがあるようです。ということでスウェーデンの話。
社会保障制度に関するアプローチなど、日本とスウェーデンの「国の運営」に対する「考え方」におおきな違いがあることがよく分かりました。国土や人口などはたしかに大きく違いますので、スウェーデンの制度をそのまま日本に持ってきても機能しないかも知れませんが、「考え方」は取り入れる方向で政治が動いてくれるとうれしい気がしました。

私たちの社会は、このままでは持続不可能だ。人類の生存を脅かす環境破壊が現実のものになり、少子高齢化が進みつつあるいま、人間のつくった仕組みを自然法則に合わせて変えていかないかぎり、次世代に無事、安心と安全な社会を引き渡すことはできない。日本が「失われた10年」を空しく過ごしている間に、スウェーデンは、2025年頃に「生態学的に持続可能な社会」あるいは「緑の福祉国家」を実現する、という大きな見取り図のもと、年金制度改革、化石燃料の消費量を抑える、資源の再利用、廃棄物を減らすといった施策を着々と進めてきた。「国家の持続可能性ランキング」(2001年に「国際自然保護連合」が発表した数字)で1位にランクされている国、スウェーデンから、私たちの学ぶものは多い。

神野 直彦 : 脱「格差社会」への戦略 ☆☆☆☆・

神野さんが考える、参加保障型社会への戦略が終章にまとめられており、よく理解できた、気がします。「こういう方向なら日本も少し良くなるね」という方向性がぼんやりながらでも見えると気持ちが少し晴れやかになります。自分が何をできるか、しっかり考えよう。

格差社会論がさまざまに論じられ、情報が氾濫するなか、一体この問題をどのように捉え、考えたらよいのか。税制は格差を助長していないか。雇用、社会保障、教育の現場で何が起きていて、どうすればよいのか。各界の第一人者一六人による討論および論考が、多くの示唆を与えてくれる。『世界』好評連載プラス書き下ろし。

米田知子「終わりは始まり」原美術館展覧会カタログ ☆☆☆☆・

いいです。でも美術館で見たプリントの方が断然良かったです。

現在ロンドンを拠点に国際的に活躍している写真家米田知子の原美術館での個展「終わりは始まり」展を記念した展覧会カタログ!!代表作でもある「Scene」「Between Visible and In Visible」シリーズに加え、新作も収録。彼女の作品世界の全体像を見渡すことが出来る、記念碑的作品集!!

米田知子「終わりは始まり」☆☆☆☆☆


米田知子 「終わりは始まり」
会場: 原美術館
スケジュール: 2008年09月12日 ~ 2008年11月30日
住所: 〒140-0001 東京都品川区北品川4-7-25
電話: 03-3445-0651


行ってきました。やっと。めちゃめちゃ良かったです。
作品と原美術館の相性もばっちりで、以前の野口里佳さんの展覧会を上回る感じでした。
米田さんの名を知らしめた「見えるものと見えないもののあいだ」シリーズも、実際の作品を見たのは初めてだったのですがとても感動しました。
また他の作品も含めプリントがめちゃめちゃいいです。持って帰ってきた図録と比べると格段の差。

そういえば、In-betweenシリーズでも一番気に入ったのが米田知子さんの写真集でした。

お時間があれば皆さま是非!

池谷 裕二, 糸井 重里 : 海馬―脳は疲れない ☆☆☆・・

脳って面白いですよね。私も「経験メモリー」を増やして天才とはいわずとも常に柔軟な発想ができる脳みそをつくっていきたいと思います。脳のことをソフトにお勉強したいかたにおすすめです。
脳のことをもっと詳しく知りたい方は、ラマチャンドラン『脳の中の幽霊』がおすすめです。これは面白かった!
“池谷 裕二, 糸井 重里 : 海馬―脳は疲れない ☆☆☆・・” の続きを読む

栗田 宣義 : 社会学 (図解雑学) ☆☆☆・・

内容はいたってまじめなのですが、挿入イラストがとてもかわいくて拍子抜けします。絶妙なバランスです。

ジェンダー、権力、ユートピア、社会変動、文化資本、テーマパーク、流行、カルト、メイク、恋愛、セクシュアリティ、規範…。日常生活から国際関係まで、あなたの疑問を明快なコンセプトと図解で説明。

名古屋から乗ってきた男

その男は、名古屋から乗ってきた。

– 新幹線下り、11:53。

名古屋から乗ってきたその男は、私の隣の席に座ると同時に食事を始めた。

カツサンド弁当と、特大サイズの缶ビールを平らげ、

約1分の小休憩をはさんだ後、

野菜サンドイッチ弁当と、普通サイズの缶ビールを平らげた。

– 新幹線下り、12:15。
次の駅、京都到着までまだ10分以上ある。

その男は、名古屋から乗ってきた。

その男は。