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「撮られているのを喜んでいるみたいですね。」というあとがきにある一文を読んだ上で改めて見返すと、たしかにそんな気がしてくる。

日本武尊が東夷討伐の際、御嶽山に陣営を設け東国一円を平定した。再び西北に向けて進めていたところ、深山の邪神が大きな白鹿と化して進路を塞いだ。尊は山蒜(やまびる)を投げつけその白鹿を退治したが、山谷は鳴動し雲霧が立ち込め、道を進むことができなくなってしまった。そこへ忽然と一頭の白狼が現れ、尊と軍を西北へ導きことなきを得た。尊は白狼に「本陣に帰り、大口真神(おおくちまがみ)としてすべての魔物を退治せよ」と告げ、白狼はその命をかしこみ、一礼をして御嶽山に戻り守護を務めた。2000年以上前から受け継がれる武蔵御嶽神社の狼信仰。江戸の中期頃からは、御師たちの熱心な活動によって関東一円に信仰が広まった。神様のお使いとされる狼(大口真神)が祀られ、魔除けや豊作祈願の神様として庶民にも知れ渡り「おいぬさま」と親しみを込めた呼び名が生まれた。

狼信仰で知られる青梅・御岳山。山上山下にある宿坊、社家の内神前に祀られるおいぬさま50体を写真家・鶴巻育子が撮影し一冊の写真集にまとまりました。