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帯のコピーのとおり、「戦争の記憶、森の静寂、野生の動物」。
でも雷鳥を撃たないでほしい。

イタリア兵のロシア撤退を描いて現代の『アナバシス』ともいわれる傑作『雪の中の軍曹』。
その著者リゴーニ・ステルンの深く静かで豊かな世界を、
戦争と狩猟を題材とするこの短篇集、『雷鳥の森』は、こよなく伝えてくれる。

プリーモ・レーヴィは、二つの奇蹟だと書いている。
「まず第一に彼が生き延びたということ(…)
さらに現にいまのような人間であり、正統であるべく己を律してきたということ」。

八十歳を越えたいまも、北イタリアの小さな町に暮らし、
森に入り、畑を耕しながら、書きつづける孤高の作家は、
人生と野生を考える道しるべともなるだろう。