泣きます。かなり。

第二次世界大戦中のロンドン郊外ブロムリーで、足と翼に障碍を持つ生まれたばかりの小スズメがキップス夫人に拾われる場面からストーリーが始まる。夫人のあふれんばかりの愛情に包まれて育ったスズメのクラレンスはすくすくと育ち、爆撃機の襲来に怯える人々の希望の灯火となっていく――。
キップス夫人がクラレンスと共に生き最期をみとるまでの12年間を綴ったこの実話は、イギリスで1953年に出版されたのを皮切りに、発刊後すぐに大きなセンセーションを巻き起こし、わずか1年半ほどの間に10版を重ねた。さらには、アメリカ、イタリア、スウェーデン、デンマーク、ドイツ、フィンランド、オランダ、インドでも続々と翻訳出版され、ベストセラーとなり当時大変な話題となった。キップス夫人の許には、世界中の読者から毎日多くの手紙が送られてきたという。
この度、この名作が、梨木香歩による心のこもった新訳でよみがえった。鳥に詳しくイギリスで暮らしていた梨木ならではの完訳である。