もうね、この後味がたまりません。

厳寒のロシア、焚き火に暖をとる大学生は千九百年以前、同じように焚き火に手を翳ざしたパウロの苦悩に思いが到り、過去が現在に直に繋がっていることに気付いた。そして、湧き出る力を覚えたのだ。これは正に希望そのものであろう。ロシア語の響きが補う豊饒さを、豊かな語義で補完する新訳と34頁に亘る奔放な絵画で再現するチェーホフ至宝の短篇世界。