モラルの違いの衝突をこんなシニカルに描くって
いいですね。
面白かったな。

新潮社から刊行されるクレスト・シリーズで最も人気ある本作は、98年度のブッカー賞にも輝いた。冒頭のシーンは、モリーという恋多き女性の葬儀。そこに参列する彼女と恋仲だった、新聞の編集者ヴァーモンと作曲家クライヴの間に、いつしか男の友情が生まれ、お互いの運命を支配する奇妙な約束を取り交わすようになる。政治家のセックス・スキャンダルや、マス・メディアの行き過ぎた報道など現実社会の歪みと人間のエゴを浮き彫りにし、名作『黒い犬』などで見せた、辛口のユーモアと洗練された文章が、特異な性格の登場人物たちの人生を見事に彩る。この前年にブッカー賞を取り損ねた、秀作『永久の愛』の翻訳化も待たれる。(新元良一)